雲の状態とは?
国際基準の地上天気図では、高気圧や低気圧、前線などの位置関係だけではなく、
各観測地点で記録された気象データが事細かく記入されています。
雲に関する要素としては雲量、雲の状態、
一番低いところに浮かんでいる雲の雲底高度が挙げられます。
ここでは雲の状態について説明します。
雲の状態(coding of clouds)は、
ひとつひとつの雲のかたちや種類を事細かく…ではなく、
空全体を見渡した時、どういう雲がどんな感じで出ているか…という
全体的な様子を記録するものです。
天気図でいうところの「気圧配置」、
生きもの調査でいうところの「植生」や「群落」といった考えかたに近いものです。
天気図の中には、高気圧・低気圧、前線などさまざまな「パーツ」の詳細が描かれています。
正確な天気予報を行うには、それぞれの「パーツ」の変化を解析する必要があります。
それとは別に、天気図をぱっと見渡したときの全体的な様子、
つまり「気圧配置」のパターンからある程度、天気変化の傾向を予想することができます。
例えば、西に高気圧、東に低気圧、日本付近で等圧線がタテに並ぶ
西高東低(冬型)と呼ばれるパターンの場合、
「太平洋側は晴れ、日本海側は雨や雪」になる傾向があります。
生きもの調査では、動植物の種類リストをつくると、そのデータは星の数ほど出てきますが、
それでも環境や地域ごとに、見られる動植物の種類には似たような傾向が表れるものです。
個々の種類ではなく「全体的な傾向」を表したものが「植生」や「群落」です。
例えば、ブナ林(ブナ群落)という言葉があります。額面どおり受け取れば
「ブナの林」という意味ですが、当然ブナしか生えていないというわけではありません。
たくさんの木が生えている中で、ブナを主体とし、ブナの多い場所でよく見られる草や生きものが
頻繁に記録される環境…という全体的な様子を表しています。 |
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雲の状態の記録方法
雲の状態は、ひとつの空について、
雲の浮かんでいる高さごとに、次の3つに分けて記録します。
記 号 |
名 称
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対象となる十種雲形 |
CH |
上層雲の状態 |
巻雲、巻積雲、巻層雲 |
CM |
中層雲の状態 |
高積雲、高層雲、乱層雲 |
CL |
下層雲の状態 |
層積雲、層雲、積雲、積乱雲 |
それぞれ、あらかじめ定義された9つのパターンから選び、
あてはまる数字または記号で記録するのです。
国際雲図帳には、「雲の状態」の判定をしやすくするために、
フローチャート形式のガイドラインも公開されています。
それについては雲の符号化のページを参照してください。
数字の場合は、ひとつの空について、
CL=X,CM=X,CH=X |
Xの部分にはそれぞれ0〜9までの数字が入ります |
という具合に表します。
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夜で暗くて見えなかったり、
低い雲や霧などに隠れてしまったりして、
記録できないときは、
Xの部分に/(スラッシュ)を入れるよ。 |
記号は、天気図(国際通報形式)で見ることができます。
雲の状態は地上気象観測の要素として、地上天気図の観測データに記されます。
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左の図は、国際基準の
地上天気図に使われる
観測データの記入形式です。
国内では、
ASAS(アジア地上解析)
と呼ばれる天気図が
この方式で記入されています。
新聞などの天気図に
登場する天気記号よりも、
はるかに詳しく情報が
記されています。
雲の状態は、
CH…上層雲の状態
CM…中層雲の状態
CL…下層雲の状態
として、それぞれ
該当する部分に
記号が記されます。
また左図のhの部分には、
一番低いところに浮かぶ
雲の底の高さが入ります。 |
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上層雲(CH)の記号と意味
上層雲の状態(CH)は、 対流圏上層(高度5,000〜13,000m)に浮かぶ
巻雲、巻積雲、巻層雲の状態を総合的に判断して数字や記号で表したものです。
記号はCH=1〜CH=9の9種類があります。
CH=0は上層雲が存在しない状態で、記号はありません。
CH=/はさまざまな理由で記録できなかった場合で、これも記号はありません。
記 号 |
CH= |
説 明 |
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0 |
巻雲、巻積雲、巻層雲のいずれも存在しない |
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1 |
毛状またはかぎ状巻雲、空に広がる傾向はない |
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2 |
濃密な巻雲または塔状や房状の巻雲、
空に広がる傾向はない |
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3 |
積乱雲からできた濃密な巻雲 |
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4 |
かぎ状または毛状巻雲、またはその共存
次第に空に広がり厚くなる |
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5 |
巻雲と巻層雲、または巻層雲のみ、次第に空に広がり厚くなる
連続した層は地平線上45度未満 |
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6 |
巻雲と巻層雲、または巻層雲のみ、次第に空に広がり厚くなる
連続した層は地平線上45度以上だが、全天は覆っていない |
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7 |
巻層雲、全天を覆う |
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8 |
巻層雲は全天を覆っていない
広がる傾向もない |
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9 |
巻積雲または巻雲、巻層雲。
そのうち巻積雲が卓越している |
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/ |
夜間や霧、低い雲に覆われるなどして、
確認することができない |
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中層雲(CM)の記号と意味
中層雲の状態(CM)は対流圏中層(高度2,000〜7,000m)に浮かぶ、
高積雲、高層雲、乱層雲の状態を総合的に判断して数字や記号で表したものです。
記号はCM=1〜CM=9の9種類があります。
CM=0は中層雲が存在しない状態で、記号はありません。
CM=/はさまざまな理由で記録できなかった場合で、これも記号はありません。
記 号 |
CM= |
説 明 |
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0 |
高積雲、高層雲、乱層雲のいずれも存在しない |
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1 |
半分以上が半透明な高層雲。
太陽や月はかすかに見える |
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2 |
不透明高層雲(半分以上が不透明)
または乱層雲 |
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3 |
半透明高積雲。1層で全天は覆っていない |
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4 |
半透明高積雲。1層または2層以上。全天は覆っていない
ふつうレンズ状だが形は絶えず変化 |
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5 |
帯状の半透明高積雲、または1層以上の連続的な高積雲
次第に空に広がり厚くなる |
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6 |
積雲または積乱雲が広がってできた高積雲 |
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7 |
不透明高積雲、または広がらない2層以上の半透明高積雲
または高層雲か乱層雲を伴う半透明高積雲 |
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8 |
塔状または房状の高積雲 |
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9 |
混沌とした空の高積雲。ふつう、複数の層をなす |
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/ |
夜間や霧、低い雲に覆われるなどして、
確認することができない |
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下層雲(CL)の記号と意味
下層雲の状態(CL)は、層積雲、層雲、積雲、積乱雲の状態を
総合的に判断して数字や記号で表したものです。
記号はCL=1〜CL=9の9種類があります。
CL=0は下層雲が存在しない状態で、記号はありません。
CL=/はさまざまな理由で記録できなかった場合で、これも記号はありません。
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雲の状態では、積雲と積乱雲も、
下層雲の中に含めて記号にするよ |
記 号 |
CL= |
説 明 |
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0 |
層積雲、層雲、積雲、積乱雲の
いずれも存在しない |
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1 |
扁平積雲、悪天候時ではない断片積雲
またはそれらの共存 |
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2 |
中程度に発達した積雲または雄大積雲
他の積雲や層積雲があってもよい |
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3 |
無毛積乱雲。頂部は巻雲状、かなとこ状になっていない
積雲、層積雲、層雲があってもよい |
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4 |
積雲が広がってできた層積雲。
積雲があってもよい |
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5 |
積雲からの変化ではない層積雲 |
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6 |
霧状の層雲、または悪天候時以外の断片層雲 |
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7 |
悪天候時の断片層雲、または断片積雲 |
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8 |
積雲と層積雲の共存。
層積雲は積雲からの変化ではない |
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9 |
多毛積乱雲。頂部は巻雲状でかなとこ状のことも多い
無毛積乱雲、積雲、層積雲、層雲があってもよい |
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/ |
夜間や霧などにより、確認することができない |
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2022年4月13日最終更新 |