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降水が落下途中で蒸発し、地表に届かない状態
雲から「すじ」がのびたような姿に見える
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尾流雲の全体的なお話
雲からの降水は、落下途中で蒸発してしまい、地表にまで届かないことがあります。この状態を尾流雲といいます。

尾流雲は細分類(補足雲形;部分的に現れる特徴)のひとつで、巻積雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、積雲、積乱雲に見られます。

典型的なものでは、降水のすじがしゅっとのび、それが地表に届く前に消えていき、まるで雲が尾を引いているように見えます。

ただし気温が低く、降水が氷晶あるいは雪の結晶であるときは、シュッとした尾ではなく、もやもやと広がっていくような感じになることもあります。

降水が雨(液体の水)であるときは、尾流雲の部分に虹ができることがあります。また太陽の光が当たって、尾流雲の部分だけが明るく輝いて見えることもあります。

国際雲図帳では1930年版でCasual Varieties(たまに見られるもののうち主なもの)としてvirgaが登場しています。そしてvirgaが見られる雲形として高積雲と高層雲の2つが挙げられています。

1956年版では巻積雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、積雲、積乱雲に見られる細分類(補足雲形)としてまとめられ、そのまま現在に至っています。

国内では藤原咲平が国際雲図帳1930年版のvirgaに対して鈎状雲という名前を充てています。また説明で「(コンマ状)落下縞を伴ふ即尾曳雲」としており、尾曳雲という名前も使っています。

石丸雄吉は国際雲図帳1930年版のvirgaに対して「鈎状」または「旗状」という名前を充てています。

伊藤洋三は国際雲図帳1956年版のvirgaに尾流雲という言葉を充てています。
日本名
尾流雲
びりゅううん
国際名
virga vir
語 源
virga
ラテン語で棒、竿、
枝分かれ
の意味
別 名 尾曳雲
積雲の尾流雲?
風吹巻雲(旧名)
十種雲形
との関連
巻 雲
巻積雲
巻層雲
高積雲
高層雲
乱層雲
層積雲
層 雲
積 雲
積乱雲
尾流雲と降水雲のちがい
雲からの降水(雨など)が、
地面に届かなければ尾流雲
地面に届けば降水雲です。
各雲形ごとの説明
巻積雲の尾流雲(Cirrocumulus virga:Cc vir

巻積雲からの降水が目に見えた状態です。
巻積雲の尾流雲はすじの部分がとても短いため、
細かい白毛に覆われたような姿になります。

尾流雲の部分が成長して残る形で、
巻雲ができることもあります(Cirrus cirrocumulogenitus :略号Ci ccgen)。

巻積雲は空高くに浮かぶ雲で、
降水があってもその量はわずかなので、
降水が地面に届くことはありません。

つまり巻積雲の細分類には降水雲はなく、尾流雲のみです。


高積雲の尾流雲(Altocumulus virga:Ac vir

高積雲の尾流雲は、すじが長くのびて、はっきり見える傾向があります。
ただ高積雲からの降水が地面に到達することはないため、
高積雲の細分類は尾流雲のみで、降水雲はありません。

高積雲の房状雲(Ac flo)高積雲の穴あき雲(Ac cav)
伴ってできた尾流雲のすじは氷晶でできており、これが巻雲として
そのまま残ることもあります(Cirrus altocumulogenitus:略号Ci acgen)。


高層雲の尾流雲(Altostratus virga:As vir

高層雲からの降水が途中で蒸発し、地面に到達しない状態です。

典型的な場合は、しゅっと刷毛でなぞったような
「降水すじ」の模様がはっきりと確認できます。

また乳房雲がほつれ、
もやもやした感じの尾流雲ができることもあります。

高層雲からの降水は、ときに地面に到達することがあり、
その場合、尾流雲から降水雲へと呼び名が変わります。


乱層雲の尾流雲(Nimbostratus virga:Ns vir

乱層雲はしとしとと雨を降らせる雲です。気温が低ければ雪が降ります。
乱層雲からの降水は、広い範囲にわたり、降りかたにメリハリも無いため、
雨や雪がはっきり「すじ」となって目に見えることはあまりありません。

また、そもそも乱層雲自体が
「雨や雪などの降水が地面に届く状態(降水雲)」を
基本的な特徴とする雲です。

つまり…

乱層雲の降水はメリハリが弱く、すじが見えにくい
乱層雲の降水降水は地面に到達するのが普通

上記2つの理由から、
乱層雲の尾流雲がはっきりと目に見えるのは
かなり稀なことと言えると思います。

  雨の降りはじめ、雨あがり、
それから夜、街明かりに照らされたとき、
運が良ければ見えるかもしれないよ


層積雲の尾流雲(Stratocumulus virga:Sc vir

層積雲は弱いながらも降水をもたらす可能性がある雲です。
そのため、ときに層積雲の雲底から、
降水のすじが垂れ下がるようにのびる姿を見ることがあります。

この降水のすじが地面に到達しない状態が尾流雲で、
地面に到達している場合は、降水雲と呼びます。


積雲の尾流雲(Cumulus virga:Cu vir

積雲の尾流雲は、雄大雲に伴うものが一般的ですが、
まれに積雲の並雲にできることもあります。


積乱雲の尾流雲(Cumulonimbus virga:Cb vir

積乱雲の降水は激しく、なおかつ
降っている場所と降っていない場所のメリハリが効いているため、
降水の「すじ」はとてもはっきり見ることができます。

ただ、積乱雲からの降水は地面に到達するのがふつうであるため、
尾流雲というかたちにはなりにくいものです。

それでも、降水の一部がたまに尾流雲となって、
それが目に見えることがあります。

比較的出現頻度が高いのは、
積乱雲上部のかなとこ雲となった部分にできるものです。
尾流雲のバリエーション
氷晶・雪の尾流雲

冬季、上空に強い寒気が流れこんできたときは、
雲の本体から氷晶や雪結晶が飛び出し、風にあおられて、
もやもやと広がっていく姿がよく見られます。これも尾流雲です。

氷晶や雪の結晶からなる尾流雲は、光が当たると白く輝き、
ときに薄明光線(光のすじ)が見えることもあります。

  氷晶でできた尾流雲には、
幻日などのハロができることがあるよ!



尾流雲に現れた虹

尾流雲を構成する粒子が水滴(雨粒)のときは、
光の当たり具合によって、その部分にだけ虹が現れることがあります。
2025年7月4日最終更新

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