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トップページ天気のはなし細分類(補足雲形)かなとこ雲
   
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積乱雲の雲頂が平らになって、水平方向に広がった状態。
典型的なものは工具の「金床」のような形になる
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かなとこ雲の全体的なお話
地球大気は、地上から対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏の順に区分されています。そして日々の天気の変化に影響を与える雲は、対流圏内で発生しています。

対流圏と成層圏の間には対流圏界面(tropopause)という境界部分があり、雲にとってここは越えられない天井のような存在です。そのためどんなに勢いのある積乱雲でも、この対流圏界面に到達するとそこで頭打ちとなり、勢い余った分は、対流圏界面に沿って横に広がるようになります。

この横に広がった状態が「かなとこ雲」です。かなとこ雲は積乱雲にのみ使われる細分類(補足雲形)のひとつです。

かなとこ雲は対流圏界面(雲の天井)に沿って広がるため、雲のてっぺんは平らになっています。

日本名
かなとこ雲
かなとこぐも
国際名
incus inc
語 源
incus
ラテン語で金床の意味
別 名 傘鉾雲
朝顔雲
雷雲(総称)
anvil cloud(英名)
一方向に長くたなびく
火焔雲 
火焔状積乱雲
雹を降らせる
雹雲(総称)
十種雲形
との関連
巻 雲
巻積雲
巻層雲
高積雲
高層雲
乱層雲
層積雲
層 雲
積 雲
積乱雲
対流圏界面の高さは緯度によって異なります。
またその気象条件にもかなり大きく左右されますが、
温帯地域ではだいたい高度13kmくらいです。

かなとこ雲ができる段階の積乱雲は、雲の中に氷晶が多く、
多毛雲の特徴をあわせもっています。
その一部が積乱雲本体から切り離されて、
巻雲として残ることも珍しくありません(いわゆる偽巻雲)。

incusがいつから使われるようになったのかは現時点では不明です。
ただ1930年版の国際雲図帳では
Casual Varieties(たまに見られるもののうち主なもの)
ひとつとしてリストアップされています。
今の雲分類表とほぼ同じ形となった1956年版からは
積乱雲の補足雲形のひとつとして位置づけられています。

藤原咲平(1944)は、著書で国際雲図帳1930年版を紹介しています。
その中で積乱雲の種(species)のひとつである
Cumulonimbus calvusにも鐡砧積乱雲という日本名を当てています
(これは現在の積乱雲の無毛雲に相当します)。

一方でCasual Varietiesとして取り上げられている
incusは鐡砧雲あるいは砧状雲として紹介しています。

石丸雄吉(1952)はCumulonimbus incus
砧状積乱雲(とこじょうせきらんうん)という日本語訳名を当てています。

伊藤洋三(1958)は、国際雲図帳1956年版をもとに、incusをかなとこ雲と訳しています。
かなとこ雲周辺にできる雲



かなとこ雲の部分をよく見ると、
さまざまな雲や現象を見ることができます。
それを示したのが上の図です。

発達した積乱雲のかなとこ雲のてっぺんには、
オーバーシュートジャンピングシーラスなどの現象ができることがあります。
また、かなとこ雲の側面には、尾流雲乳房雲がよく見られます。
各雲形ごとの説明
積乱雲のかなとこ雲(Cumulonimbus incus:Cb inc

積乱雲のてっぺんが対流圏界面にぶつかって
頭打ちとなった状態です。

雲のてっぺんは平らになって、
対流圏界面に沿うように左右に広がっていきます。

その広がりは数百kmにも達することがあり、
かなり離れたところから見ないと、全体を見通せないくらいです。

かなとこ雲の部分は、ふつうもくもく感がなく
スーッと直線的な輪郭になります。
上空の風が強いときは、風に流されるように
風下側に長々とたなびいた状態になることもあります。

かなとこ雲の部分はほとんどが氷晶でできているため、
太陽の近くにあるときは、幻日などのハロができることもあります。

  かなとこ(金床)はこんな形をした台で、
鍛冶屋さんが使う道具だよ!

かなとこ雲のバリエーション
朝顔雲

かなとこ雲はどちらか一方に偏って広がることが多いのですが、
条件によってはまるで朝顔の花が開いたように整った形になります。
このような雲は、古くから朝顔雲と呼ばれています。

ただ形の整った朝顔雲が出たとしても、
その変化はとても早く、あれよあれよという間に
乱れてしまうことが多いものです。


火焔状積乱雲 (Cumulonimbus capilatus incus :Cb cap inc

かなとこ雲の部分が上空の強い風に流されて、
一方向に長くのびた状態を火焔雲または火焔状積乱雲と言います。

100km以上離れた場所にある積乱雲から
長々とたなびいてきた雲が頭上に到達することもあります。


細長くのびたかなとこ雲

かなとこ全体が風になびいて長くのびるの火焔雲に対し、
こちらはかなとこの先の一部がぴゅーっと細長くのびた状態です。
詳細不明ですが、上空の風が強いときにできやすい傾向があります。


オーバーシュート(overeshooting top)

かなとこ雲の上に突き抜けるように、
もくもくとした部分が顔を出すことがあり、
これをオーバーシュート(overeshooting top)と言います。

積乱雲が勢いよく発達し、
対流圏界面を部分的に持ち上げてしまった状態です。
しかしこの状態は長続きせず、やがてしぼんで
かなとこ雲の中へと消えてしまいます。

オーバーシュートができるような積乱雲は
竜巻などの破壊的な現象を伴うことがあるため要注意です。


ジャンピングシーラス(jumping cirrus)

かなとこ雲のてっぺんから、
もやもやとした雲が立ちのぼることがあります。
これをジャンピングシーラス(jumping cirrus;JC)と言います。

ジャンピングシーラスは氷晶でできていて、その高さは1〜2kmほど。
対流圏界面の壁を越えて、成層圏内に入りこんでいます。
まだよく分かっていないことが多いのですが、
いくつかのタイプがあることが知られています。
2023年9月22日最終更新

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